足元ご注意ください(イギリスEU離脱問題)

「イギリスがEUを離脱するって決めたそうだけど、それはいったい何を意味しているの? 日本への影響はどうなの?」と気になっていた方のために、Economist誌に問題を的確にとらえた記事があったので、そちらを紹介しつつ、後半に日本への影響をまとめてみました。

 

 

 


Theresa May fires the starting gun for what looks likely to be a hard Brexit, taking Britain out of Europe’s single market
Oct 8th 2016 | BIRMINGHAM, BRUSSELS AND PARIS | From the print edition
Timekeeper

GIVEN that Britons voted on June 23rd by 52% to 48% to leave the European Union, Theresa May had to say something about Brexit at her first Conservative Party conference as prime minister.

 

By choosing, unusually, to open proceedings on October 2nd, she hoped to park the subject for the rest of the week, letting her big speech on October 5th dwell on the broader theme of “a country that works for everyone”. No such luck. In practice she just advertised the fact that Brexit will be the issue that makes or breaks her government.

The essential problem that Brexit poses for her is clear. On the one hand, she wants to keep the economic benefits of facing no barriers to trade in the world’s largest single market, the EU. But on the other, her 27 EU partners are not willing to agree to this unless she also accepts the single market’s obligations, including free movement of workers and a plethora of EU regulations.

 

The dilemma has come to be known as “soft” or “hard” Brexit. Soft Brexit means giving priority to the single market at the price of accepting some limitations on control over borders and laws, as well as contributing to the EU budget. Hard Brexit puts the emphasis on taking back such controls even if that means walking away from the single market.

テレサ・メイはヨーロッパのシングル・マーケットからブリテンを離脱させるために、"Hard-Brexit"になりそうなものを打ち出した。

 

2016年10月8日

 

イギリス国民の多数が6月にEU離脱賛成に票を投じたため、テレサ・メイは首相としての初めての保守党会議でそれについて言及しなくてはならなかった。

 

いつもとは異なり、10月2日に議会を始めることを選び、彼女はその問題を週の残りに取っておこうと願っていた。そして5日の大きなスピーチで「全員のための国家」という幅の広いテーマを扱おうと考えていた。が、そんなに甘くなかった。実際のところ、Brexitは彼女の政府を壊しかねないという事実を宣伝したにすぎなかった。

*日本の報道では「ブレグジット」とか「ブレクジット」と、濁ったカタカナを当てていますが、わたしが聞く限り「ブレクシット」と濁っていないように聞こえるので、あえてカタカナはあてませんでした。

 

Brexitの本質的な問題は明白です。彼女は世界最大のシングル・マーケットでの取引において、経済的な恩恵を保ちたい一方で、もし彼女が労働者の移動の自由などを含む規制上の義務を受け入れない限り、EUのパートナー27カ国は彼女の要望に合意しないだろうとうことだ。

 

そのジレンマは「ソフト」か「ハード」かという議論になっている。「ソフト」というのは優先順位を定め、国境や法律に対するコントロールという或る程度の制限を受け入れ、またEU予算にも貢献することであり、「ハード」とはたとえそのシングル・マーケットから抜けることになろうとも、そのようなコントロールはすべて取り払ってしまうことを意味している。

 


で、結局、日本への影響はどうなの?という疑問を持った方も多いと思いますので、いくつかご紹介します。

 

・ダイアモンド・オンライン「ブレグジットが英国税制と日本企業にもたらす深刻な影響

 さて、英国のEU離脱は税制に大きな影響を及ぼす。1つは、英国とEUとの取引が「域外」取引になるので、ヒト・モノ・カネ・サービスの自由な移動を裏付けていた様々な税制上の特権を一気に失うことになる。これは、英国を欧州のゲートウエーと位置付けてきた日本企業の戦略にも、深刻な影響をもたらす可能性がある。

 一方で、英国はEUのくびきから逃れることになるので、租税政策の自由度を取り戻す。「ウインブルドン型(貸し座席型)」政策をとる英国が、OECDメンバー国としての限度・節度はあるものの、相当程度の優遇税制を導入してくることは容易に予想される。

 これに対してEUは、これまで英国の反対で進まなかった法人税の課税ベースの統合(CCCTB)や、金融取引への課税など、より統合度を高め、域内であることの優位性を訴える方向に舵を切ることが予想される。

 

 

・PWC「英国のEU離脱(ブレグジット)への対応と考察

*PWC(プライスウォーターハウスクーパース)はデロイト トウシュ トーマツ、KPMG、アーンスト・アンド・ヤングと並び、世界4大会計事務所(Big 4)の一つです。詳しい動画も掲載されていますので、じっくりとご覧ください。