若い頃、わたしはシドニーでワーホリをしました。
そのとき、英語力をのばそうと思い、日本食レストランで働いたときのことをお話したいと思います。
そのときはだいたい滞在1年が過ぎた頃で、わたしは日本を発つ前にもけっこう英語は勉強していましたし、アジア料理店のキッチンスタッフとしてずっと働いていたので、日常的な簡単なやりとりはかなりスムーズにできるようになっていました。
とはいえ、まあだいたいは「そこの○○をとって」とか「もうすぐこれは完成だよ」とか、パブで外国人と飲んだりしても、それほど込み入った話もしませんので、ある程度のところで上達が止まってしまったと感じていました。
そこで日本食レストランでの仕事を見つけ、ウェイターとして働くことにしたのです。
そこの女将(おかみ)さんは、たしか航空関係の仕事をしていたそうで、旦那さん(長年、和食の板前さんをやっていた)と二人三脚で、お店を切り盛りしていました。女将さんはそれほど英語が上手ではなく、店が落ち着いてきた20時か21時頃になるとわたしに、「てきとうにお客さんとオシャベリしてて」と頼んできまいした。
たしかに、日常的なちょっとした会話ならわたしのほうが、はるかにスムーズなのですが、やはり仕事のこととなると、彼女の英語はまったく別次元のものとなるのです。
電話がかかってきて、テイクアウトの予約だったら、何をいくつか、あとは相手の電話番号を聞いて、適当に受けといてと言われていたので、トライしてみたのですが、お店の商品について突っ込まれると、わたしはおろおろしてしまって、うまく受け答えができません。なにかアレルギー物質が含まれていないかとか、どのように調理されているのか(和食なのでなんとなくは分かるのですが、たとえば、大根おろしはどう言ったらいいのか、みたいなこと)をうまく説明することができませんでした。
しかし、女将さんは流れるような英語で、自信満々に応対しているのです。それもそのはずで、開店の時から旦那さんとじっくり話し合って、メニューを考え、そしてそれまでに数えきれないほどの現地のお客さんに満足いただいているのですから。
さて、いよいよ本題に入りましょう!
では、なぜ、日本の企業はTOEICのスコアをこれほどまでに重視するのでしょうか?
わたしはずっと派遣社員なので、正社員のほうの事情はあくまで推測で進めますのでご了承ください。
それは採用する側が、あまり英語ができない、自信がないからです。
もし、自信のある担当者であれば、TOEICはあくまで目安として見て(個人的には700点くらいまでは、その人材の英語力をしっかり反映しているかと思います)、あとは面談の時の会話力、対話力と言ったほうがいいのかもしれまんが、まあ要するに受け答えを見れば、すぐにその応募者のレベルは分かるはずです。
わたしの場合、リスニングはほぼ満点に近いので、もしスコアを伸ばそうと思うと、後半のリーディングでたくさんの問題を解いて、しかも高い正解率を保たなければなりません。 しかし、わたしは基本的にじっくり読みたいタイプなので、問題をすべて終わらせることができません。
今こうして外資系金融機関で働いてみて、TOEICのあの狂ったように時間に追われた状態で、読解しなければならない状況など一度もありません。 むしろ、わたしが好むように、じっくりと読み込んでいき、細かい部分にまで誤りがないことが現場では非常に重要です。
読み書きの面では、すでに述べたように「正確性」が重要で、でも、電話会議などでやりとりしなければいけない状況ではどうでしょうか?
たしかに、ある程度の早さは求められます。
しかし、ここで重要なのは、わたしが日本食レストランの女将さんの例をあげたように、自分が取り組んでいるその仕事自体に理解が深いという点なのです。
たとえば、「Take」を使うべきか「Get」「Have」どれがネイティブらしい自然な表現か、とか「Make」や「Set」あるいは「Move」のどれがいいのか、実際にこれは相手によってもさまざまに好みや習慣があり、まったく重要ではありません。そのどれを使っても通じます。そんな細かいことよりも、たとえば、或る多国間での電信取引について、どのようなリスクが想定され、どのような法律を順守しなければならないのか、それらのことはたいていグレーなので、どのあたりのラインを守らないと監査の時などに面倒なことになるのかというのは、まずは大きな枠組みを理解し、そして個々の具体的な例について、大枠のルールをどのように適応させていくのかを考えるというような文脈のなかでの理解が求められるわけです。
そして、コールのなかで確認しあわなければならないのは、お互いがその文脈をどのように考えているのか、そこで共通の認識を持てたのなら、あとはどのあたりで落とし所を見つけるのか、ということになっていくわけです。これはそれほど速くてネイティブっぽい発音でなくても、もし相互理解が得られているのであれば問題はありません。
では、わたしのおすすめ英語学習法はどんなものになるのか、というと、それはまずは自分が目指すべき業界や分野を見定めることでしょう。
あと、さきほども軽く触れたようにだいたい600点か700点くらいを目指しているうちは、広く一般的な英語力の向上を考えていればいいのですが、そこに達したあと、例えばわたしのぶつかった壁のように「速読力」とかを身につける努力をするのであれば、それよりも自分が進みたいと考えている分野の英文記事などをネットで探して、英会話スクールなどでその話題について話していれば、効率的に成果をあげられるでしょう。
おそらくこの話を聞いて、「うーん、自分が進みたい分野がわからなーい」という人も多いでしょう。
その場合には、なおさらTOEICのスコアを気にしてもしかたがありません。もし、TOEICのスコアを重視している企業に対して、多少印象を良くして、見事に採用されたとしても、そのような職場ではほとんどが定型化されたつまらない作業ばかりで深いコミュニケーションに英語を使うことはできないからです。 逆にガンガン英語でのコミュニケーションをしているような職場で、あなたがその分野に興味があるのなら、縁にも恵まれるでしょうし、実際に働き始めてからもどんどん信頼を得て、やりがいのある仕事を任せてもらえるようになるでしょう。
このサイトではできるだけたくさんの金融・経済関連の英文ニュースを紹介していくつもりです。もし、その分野に興味があるのでしたら、専門用語は自分で調べて、まず日本語でどのような大枠になっているのを理解し、また文法的な部分も急がずに、どこからどこまでがひとつの節になっていて、どのように別の節とつながっているのか、などがゴチャゴチャにならないように気をつけて、しっかり読んでみてください。
その努力によって、TOEICを700点から850点にあげることはできない可能性が高いですが、実際の現場でおろおろしないですみます。
以前、マイクロソフトがテレビCMで、「英語を使う仕事を探すよりも、MOSを受けてパソコンスキルを高めたほうが役立つ」と謳っていましたが、個人的にはあの意見には賛成です。「英語を使う仕事」なんてものは、そんなものそもそも存在しないんですよ。
レストランでも、外国人のお客様を接客したいと思えば、その時点で「英語を使う仕事」になるでしょうし、わたしが勤めている金融機関だって同様です。 逆に、貿易の仕事をしていても、外国人とやりとりする必要のない部署であれば、それは「英語を使う仕事」ではありません。
コンピュータはある程度使えるようになったから、今のTOEICスコア300点から500点位に伸ばしたいというのであれば、個人的には、まだまだ遊びながらでも十分伸びるレベルだと思いますので、たとえば、洋楽の歌詞などをなんども繰り返し覚えて歌ってみるのとか、好きな映画を”英語字幕”で繰り替えし見る、などなどがおすすめです。
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OY (月曜日, 10 10月 2016 18:06)
自分もそのようにおもいます。